銅屋根クロニクル

No.13

三博の屋根を彩る緑の縁(下)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

トーハク(東京国立博物館)、キョーハク(京都国立博物館)、ナラハク(奈良国立博物館)の「サンハク「三博」の建物を設計した片山東熊(かたやまとうくま)の屋根の続編です。

東京国立博物館表慶館

東京国立博物館表慶館
天気が良ければ、夕焼けがドームの石壁に映り、緑青の屋根の向こうに薄明かりの灯ったスカイツリーが見える。さらに運が良ければ暗い蒼空を背景に鳥が横切るといったロマンティックな風景を堪能できる。

奈良国立博物館正面
明治27年、帝国奈良博物館として、京博の1年前に竣工した。現在の感覚では小振りながら大日本帝国の威信をかけた権威に満ちた重厚な建築である。しかし重厚過ぎて奈良の地では周囲から浮いた感じも受ける。煉瓦構造ながら淡い黄色の化粧石を貼り付け、目地も美しい。

裏側にあたるのが奈良国立博物館入口側
桟瓦の屋根と銅の瓦棒葺きで、正面とは一転して、まったく今の奈良風だ。

上部のアップ
シンプルな銅板の瓦棒葺き。京博の事務棟と同様に大棟に鉄の錺。この部分だけ見れば片山色は薄い。

正面飾りの背屋根やフィニアル(写真中央)の付け根だけでなく、あちこちに歪みひずみ、隙間ができている。木下地の劣化はかなり進行しているようだ。

京博の樋

奈良博の樋
片山のこだわりはもちろん樋(とい)にも及ぶ。京博、奈良博共通のイメージだ。 ただ奈良の方は少し残念な補修の手が入っているようだ。

赤坂迎賓館 赤坂離宮(東京)

鹿目線の奈良博。博物館の入り口側から。

片山は、東京駅を設計した辰野金吾(1854-1919)とは工部大学校の同期であり、東京府庁の設計者である妻木頼黄(1859-1916)は後輩。片山はフランス、辰野がイギリス、妻木がドイツといった作風で、三人は「明治建築界の三雄」と称された。関西地区では、片山の帝国奈良博物館、辰野の日銀行大阪支店・京都出張所、妻木の丸三麦酒醸造工場等の作品が現存している。

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