銅屋根クロニクル

No.87

江戸開城密議の寺で新旧様式の銅板屋根を見る
池上本門寺(東京都)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

長栄山池上本門寺は東京都大田区にある日蓮宗の大本山。
日蓮は、弘安5年棲みなれた身延山から、病気療養のため常陸の湯に向かう途中、武蔵国池上(現在の東京都大田区池上)の郷主・池上宗仲の館で亡くなった。池上宗仲は、法華経の字数(69,384)に合わせて約7万坪の寺域を寄進し、寺の礎を築く。以来「池上本門寺」と呼びならわされたという。

池上本門寺は、明治維新の前夜、西郷隆盛と勝海舟が江戸開城の密議をしたところでもある.多くの堂宇が第2次世界大戦で焼失したが、五重塔は慶長三年(1598年)の建立でいまも現存しており,重要文化財として指定されている。

本門寺にとって日蓮像を祀る大堂(祖師同)は最も重要な建物だが、本殿とともにこれらは銅板ではなく本瓦葺。銅屋根の見どころはまずは重文五重の塔、経蔵、仁王門、古い建物に溶け込む新しい客殿や霊廟である。

総門から見てみよう。

総門は、五重塔、宝塔、経蔵などと共に、戦災を免れた数少ない古建築の一棟として重要である。素木の総欅造 切妻屋根 銅板葺(当初は瓦葺)。安藤広重の『江戸みやげ』や『江戸近郊八景』にも描かれている。元禄年間に建立されたと伝え、扁額「本門寺」は門より古く、寛永4年(1527)本阿弥光悦の筆による。

平成30年9月、建造当初の姿が復刻・改修された。加藤清正の築造寄進になる96段の石段を上ると、仁王門(三門)が現れる。共に昭和20年4月15日の空襲で焼失、仁王門は同52年に銅板屋根で再建、仁王尊は同54年に新造された。アントニオ

銅屋根の見どころはまずは重文五重の塔

五重塔

猪木をモデルにした点でも有名だ。鉄筋コンクリート造 入母屋造 重層門 銅板の本瓦葺 棟高17.2メートル 間口16.4メートル 奥行6.4メートル。

仁王門

仁王門

経蔵

経蔵

経蔵

経蔵

経蔵の宝珠

経蔵の宝珠

総門

総門

客殿の穏やかな屋根

客殿の穏やかな屋根

重文屋根と調和し、控え目ながら美しい客殿の穏やかな屋根。

五重塔(国の重要文化財)

関東には幕末以前の五重塔のうち4基現存するその中で、一番古い塔である。
 社歴によると発願の契機は、のちに徳川2代将軍となる秀忠の病気平癒祈願にあった。病が癒え、将軍となった後、慶長12年(1607)建立された。棟梁は幕府御大工の鈴木近江守長次、鋳物師は椎名土佐守吉次。幕府のお声掛かりで建造された当時第一級の塔であるにもかかわらず、江戸建築が確立する前の桃山期の建立であるため、特に構造上、過渡期の特色が濃厚である。桃山期の五重塔は全国で1基 だけであり、文化遺産としての価値は極めて高いことが、重文指定の理由とされる。

初層を和様(二重平行垂木・十二支彫刻付蟇股など)とし、二層以上を唐様(扇垂木・高欄付廻縁など)とする和様と唐様の折衷様式が特徴、平成13年に全面修復が終了した。旧国宝指定、重要文化財。桃山時代・慶長13年(1608)建立。木造心柱と彫刻部は檜材、四天柱・側柱などの主要部は欅材。初層二層は本瓦葺、三四五層は銅板瓦葺(当初は本瓦葺)。総高約31メートル(基壇の計測位置による)塔高29.37メートル、方三間五層塔。

経蔵(大田区指定有形文化財)

江戸中期の本格的かつ大型の経蔵で、全国的にも注目される。なお、大田区文化財。江戸時代・天明4年(1784)建立 方三間宝形造。総欅造 銅板瓦棒葺(当初は本瓦葺総高11.33メートル 。

長栄山池上本門寺は, 五重塔を除くすべての社殿は昭和二十年の東京大空襲で焼失、仮設建物状態がつづいていたが、昭和三十五年(1960年)復興奉賛会が結成され,宗門の努力でまず大堂が建立された。続いて本殿(常経殿)・講堂・山門が次つぎに再建されてきた。その締めくくりとして、また,開祖日蓮上人の700遠年忌記念事業の一環として実施されたのが大客殿(書院・庫裡・学僧寮)である。

「設計上ことに留意したのは,既設の建物(本殿・講堂等)との歩調,全山の調和であり,以前からそこに存在していたかのように溶けこんだ建物をいかにつくるかに苦心した」だったという。詳細は日本銅センターが1996年に発行した「銅板葺屋根~社寺建築を中心に~」が詳しい。

設計者は「客殿は既存の本殿より目立ってはいけない建物である.このための配慮として本殿側から見ると一見平家建てに見えるよう屋根勾配を一体化し,本殿の屋根が反りで堂々としているのに対して,客殿は起り屋根で控え目にしている,屋根材も本殿は本瓦葺きに対し客殿は黒銅板葺き,棟のみ瓦をのせ,すべてにわたり本殿より控え目に落着いて見えるよう配慮した.屋根葺き材の黒銅板は0.35mm厚のものを使い, 下地はソーダストモルタル厚さ40mmの上に20kgのアスファルトフェルトを敷いてある.葺き方は一文字葺き(平葺き),隅棟は廻し葺きの入母屋で,2階の大屋根が1階の屋根と明り採り部分を挟んで連続した勾配を形造っている」と記している。

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