銅屋根クロニクル

No.91

名古屋城天守から市・県庁舎の銅屋根をみる
名古屋市庁舎・愛知県庁舎(愛知県)

(1/1) ルーフネット 森田喜晴

名古屋城の見事な緑青屋根を前にすると、まぢかに建つ庁舎の屋根に気づくことはないが、名古屋城天守から見渡せば、市庁舎高塔の屋根や県庁舎の天守風屋根は、しっかり存在感を示している。

信長は安土城天守の軒先瓦に漆で金箔を貼った「金箔瓦」を使用したが、城郭の天守の屋根に金属が使われるのは、関ヶ原の合戦以降のことだ。銅を本格的に使ったのが家康で、当時金箔瓦より高価であった銅瓦を江戸城、名古屋城に用いた。しかし名古屋城は第二次世界大戦の空襲で炎上し、現在の天守は、昭和34年に鉄筋コンクリートで原型通り復元された。屋根の銅瓦は木製の屋根瓦に0.5mmの銅板を張り付けたものだった。
(*名古屋城の詳細は本協会HP「銅屋根クロニクル」No,14 ~リズミカルな屋根を彩る緑青瓦と金鯱~をご覧ください)

名古屋城旧三の丸の北東・東に緑の屋根の特徴のある建物が並んでいる。

 名古屋城旧三の丸の北東・東に緑の屋根の特徴のある建物が並んでいる。平成26年、同時に重文指定された鉄

天守より市庁舎(左)、県庁舎(右)の緑青屋根を望む。

天守より市庁舎(左)、県庁舎(右)の緑青屋根を望む。

筋鉄骨コンクリート造近代建築で、銅瓦屋根を戴く帝冠様式の名古屋市庁舎と愛知県庁舎である。いずれも名古屋城とのバランスを強く意識した外観を持つ。

名古屋市庁舎・愛知県庁舎

名古屋市庁舎

名古屋市庁舎

名古屋市庁舎は、昭和8(1933)年竣工、延床面積24,000㎡、「当時の市庁舎としては突出した規模を誇る。
特産のタイルを駆使した壁面で独創的な意匠を創り出し、西洋的な建築様式に日本的な要素を取り入れて内外に優れた造形美を示し、高塔を聳えさせた昭和初期の記念的庁舎建築として価値が高い。」として重文に指定された。

名古屋市庁舎は、名古屋城旧三之丸の北東に位置し大津通に面した西を正面に建つ。 愛知県出身で、大阪府庁舎(大正15(1926)年 竣工)を設計した平林金吾の案をベースに土木部建築課が実施設計を行った。施工は大倉土木株式会社。鉄骨鉄筋コンクリート造、地上5階、地下1階建、塔屋付、建築面積は4,511.84㎡。市政執務棟、1階を石張り、2階から4階を茶褐色のタイル張り、5階を淡黄色のタイル張りとした3段構成の外観である。西正面の中央には5階建の塔屋を設け、頂部には銅板 を貼り付けた瓦葺の宝形屋根を二重に架けて、軒を切妻に切り上げた異色の屋根である。また各軒の中央に鯱を、頂部には四方睨みの鯱を載せている。

愛知県庁舎

愛知県庁舎

愛知県庁舎は、昭和13(1938) 年竣工、名古屋市庁舎とともに日本趣味を基調とした大規模庁舎建築が並立する都市景観を創り出している。重文指定の理由は「外観意匠においては、西洋的な様式と城郭天守の意匠を融合させて地域色を現したといえる。昭和前期における日本の建築思潮で課題となっていた「日本趣味」の表現を達成しており、特にすぐれた意匠と歴史価値を持っている」としている。
基本設計は当時「日本趣味を基調とする東洋式」の建築に関する実績をもつ渡辺仁と西村好時らが行い、これを基に内務部営繕課が実施設計を担当、戸田組が施工した。
鉄骨鉄筋コンクリート造、地上6階一部7階、地下1階建、建築面積は4,665.99㎡。

建物の1階を石張り、2階から5階を黄褐色テラコッタ張り、6階と7階を白色磁器モザイクタイル張りとした3段構成。名古屋城大天守を模した破風付の入母屋造を多用する屋上階と、1 階車寄せに本瓦棒銅板葺の勾配屋根を置き、陸屋根のパラペットに瓦葺屋根を形作って日本趣味を見せている。

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