No.99
(1/1) ルーフネット 森田喜晴
日本銀行の旧館(本館)。建築学界の第一人者であった辰野金吾(旧帝国大学工科大学、現東京大学工学部教授)が設計したわが国最初の国家的近代建築。わが国近代西洋建築設計の先駆者である辰野は、日本銀行の支店(大阪・京都・小樽など9店舗)やその他に東京駅、旧両国国技館などの設計も手がけている。日銀本館は、明治中期の西洋式建築物としては、東京・赤坂の迎賓館とならぶ傑作といわれており、昭和49年(1974年)2月5日に国の重要文化財に指定されている。
本館の建物は地上3階、地下1階(延床面積約1100平方メートル)。1階部分はほぼ完全な石造りで、2~3階部分は煉瓦を芯材として、外側に薄く裁断した花崗岩を貼り付けてある。中央にドームを据え、正面に4本、左右両翼に各2本ずつの列柱を配置したネオ・バロック建築様式だが、壁面などを中心にルネサンス様式の意匠が採り入れられている、というのが一般的な評価である。
日銀本店の建物は、旧館(本館、2号館、3号館)、新館、分館と3つの部分で構成されている。旧館は秩序と威厳が強く感じさせる古典主義建築の外観にあらわされ、中庭の1階にはドーリア式の列柱が、正面・中庭・西面の2階から3階を貫くコリント式の双柱、さらに正面中央にはドーム(丸屋根)を戴き、建物のシンボルになっている。
石と内装材のレンガを積み上げた外壁の石の種類は、地階と1階は花崗岩、2階以上は安山岩。大正12年(1923年)に起きた関東大震災では、建物自体は無傷だったが、近隣の火災が日本銀行にもおよび、中央のドームや一部フロアは、被害を受けた。現在のドームはその後復元したものである。現在の日本銀行の建物の中でもっとも古く、明治29年に完成した。
日銀本館は、コロナ禍の落ち着きを見据えて一般公開を再開しており、内部の見学ができる。中庭から本館外壁を間近に見ると、安山岩の外壁と緑青銅板の対比が際立つ。