あの屋根!この屋根!

茅葺き屋根の缶詰は タイムカプセル?

(5/5) ルーフネット 森田喜晴

おわりに

5年も一緒に餅をつけば気心も知れてくる。

これはこの原稿にエピローグとして、締め切りを過ぎてもどうしても入れたかった写真です。2013年12月22日午前10時撮影。東京都下、ある古民家庭先でのもちつき風景です。オーナー家族とその親戚、隣接する小さなマンション住民合計約40世帯が5年前から始めた餅つき大会です。

茅葺き屋根の真ん中のグレーの物体はソーラーパネルではありません。金属です。

煙出しのひさしから落ちる雨水が特に屋根の中央部を痛めています。棟は早くから金属を被っていました。屋根の葺き替えは1度にはせず、三分の一ずつ行っていました。最後に葺き替えたのが10年前。本来なら予定では葺き替えるべきこの中央部分に手がつけられず、先月金属になってしまったのです。地域に残った最後の職人は5年前に亡くなったそうです。これまで職人2人と自分たち3~4人が手元として手伝い、茅はなんとか調達していました。今回も地元の職人ならともかく、他所から職人を頼む予算はとてもないので諦めたそうです。

この古民家の裏にもボロボロになった茅葺きの小屋があって、80歳を目前のオーナーは、自分で金属をかぶせてしまいました。一方こちらの大きな旧母屋では、束を立て、茅の負担を減らして、金属を被せるためにこんなパネル形式を考案したようです。

棟の中央の煙出し。

この方法の良し悪しは解らないが「何とかしたい、大切にする」という気持ちはよく伝わる。

東京都下では、茅葺き民家はまだ多く残っています。でも民家園のような保存施設内の建物や公的建物を除いて、この写真以上に茅葺屋根の劣化が進んでおり、多くは金属板を差し込んだだけの修理です。

塩沢さんは缶詰屋根を、「良い"トタン"」や「いまひとつの"トタン"」と批評してみる楽しみ、を提案しました。このような缶詰手前の金属の修理方法でも「よい修理」「まあまあの修理」「愛情あふれる修理」「アホやなあ、という修理」などと楽しめるぞ、と感じた次第です。

取材協力 塩澤実 (茅葺屋、http://www.kayabuki-ya.net

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