あの屋根!この屋根!

たかまつミライエ 最先端技術と匠の技で完全球体の防水に挑む

(3/4) 一般社団法人 日本金属屋根協会・広報委員会

同じ球体でも内部と外部では施工方法が異なっています。

Q3:同じ球体の一部であっても、建物からはみ出した外部と、建物内部になる下の部分では,構造も仕上げも異なるのですね。

球体の上部3分の2はPC下地、下3分の1は、鉄骨下地です。内装部分の溶接はシームではなくスポット溶接で、歪を最小限にして、はぜも倒したりせず、溶接歪を最小限にとどめる工夫をしています。球体の底が下階の天井になるわけですから、来館者がすぐそばで見るわけで目線が近く、大変目立ちます。とくに頂部は通常の仕上がりだとはぜが集中してくる部分が見えてしまうため、キャップ(円盤)でカバーすることではぜを隠しています。これもこの現場独自の工夫ですね。

球体の上部は球面のPC下地ですから、下地の丸みが自然に出ますが、下部の内装部分は鉄骨下地のため、多面体になって、ふくらみが出ません。そこで板材の下に、調整下地を入れて膨らませハリを出しています。この結果ほとんど歪はありません。パネルよりきれいな仕上がりで、是非近くで見ていただきたいですね。

同じ球体でも内部と外部では施工方法が異なっています。全体としては歪をなくすことが求められてはいるのですが、外部は防水性を重視してシーム溶接とし、内部は歪をよりおさえるために板金の納めとして施工法を使い分けています。外装部分に関しては全面溶接の防水仕様です。
水平部分のジョイント部ははぜが立ったままだと水が

球体の上部3分の2はPC下地、下3分の1は、鉄骨下地です

溜まってしまうので、はぜを倒して水が流れるようにしています。シーム溶接によってわずかですが歪が出ます。外装部分はシーム溶接の上、はぜを倒すだけでさらに歪が出ますが、防水機能が求められるため、防水を考慮しないでよい内部と同じ仕様にはできません。

Q4:実物大のモックアップで検証したとか?

当社の技術開発センターで、実大の模型(モックアップ)を作って施工実験、検証しました。開発部門は、新しい施工システムと溶接機を考え、モックアップを作り検証するという一連の作業を施工部隊と一体となって完成しました。

北半球では、PC板4枚分を実際通り試験施工した上で、施主、設計者に仕上がり、ジョイントの納まりの了解を得ました。

Q5:下葺き材やクッション材まで風船加工していますね。

金属屋根の防湿材としてはアスファルトルーフィング(22㎏品)が一般的ですが、シーム溶接ではより信頼度の高い改質アスファルトルーフィングを標準としています。今回は改質アスルーフィングシートも風船加工してカットして、ルーフィングのジョイントが屋根溝板間の中央に来るように、また皺もださないように細心の注意を払っています。フォームメーカーに対してもポリエチレンフォームを風船加工で割り出した形にカットした上で、現場に納入するよう依頼しました。3次元の割り付けがすべてに活きています。

半径8 メートルの球体というのはとても小さい

北半球モックアップ検証(PC の上にテスト施工)

Q6:球体以外にも難しかったところは?

エキスパンションジョイントの取り合いが絡んでくる複雑なところが多数ありました。シーム溶接の防水性と他部材との取り合いの止水性を確保する必要があり、捨て笠木を現場で作って何度もテストし承認を受けました。

また、天井、サッシの取り合いが絡んでおり、納まりが複雑になり、現場で関係者が協議して決めていきました。天井端部と梁が緩衝していたり、天井を貫通している柱周り等事前の検討が十分でない個所もあり、複雑な見切り納めを手加工で取り付けるなど、柱周り一か所で3日もかかることもありました。

通常はシールの取り合いでやるところを板金工事での納めを求められたほか、笠木や軒先唐草納めと躯体とのエキスパンション部についてもエキスパンションゴムを当社で取り付けて納めています。

今回の特殊な例のひとつがこの「軒先エキスパンション納め」です。もともと金属パネル納まりだったのですが、パネルだと目地シーリングが発生しシーリング材の油によりチタンを汚す恐れがありました。また止水的にも他業者が入ると、漏水事故が起こった時に責任が不明確になる、という管理者の意向で、すべて板金納めで仕上げています。

室内側天井のはぜ留は、100ミリピッチのハンドスポット溶接、この部分だけで工期は1か月半かかっています。鉄骨下地の精度がそのまま仕上げの美しさに関わってきますので、屋根工事側で下地調整もしながら、慎重に作業しました。

さらに苦労したのは、仮設の足場です。球の円周に沿った円形の足場はできたとしても溶接機の入る幅が必要になります。四角の足場を組んでもらって、角は棚足場で持ち出している。通常、足場は屋根面に近いところまで欲しいですが、溶接するときだけは機械の幅、50 センチは必要となるため、その時々の盛替えは、当社でせざるを得ませんでした。

また長い板材を、球体に張り付けるのだから、円弧に沿って押さえつけなければなりません。巾の広目の布をウインチで引っ張ってアールに合わせて押さえつける等いろいろ工夫しました。球体など、複雑な形状の現場は仮設で苦労しますね。

南半球モックアップ検証

南半球モックアップ検証(鉄骨の上にテスト施工)

割り付け、墨だし、はぜの倒し方などを検討

割り付け、墨だし、はぜの倒し方などを検討

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