銅屋根クロニクル

No.1

すべての瓦を下ろした正倉院正倉

(3/5) ルーフネット 森田喜晴

瓦を下した後、屋根の一部を開口し、小屋組みの状態を確認。

瓦を下した後、屋根の一部を開口し、小屋組みの状態を確認

今回の修理は屋根瓦のふき替えと垂れ下がった軒先の補強などが中心。大正2年に実施された解体修理から約100年を経過し、傷みが徐々に進行して雨漏りが懸念されていました。瓦にひび割れがみられ、瓦の重みで軒先が垂れ下がっています。屋根瓦の破損により、屋根の一部にコケや雑草が繁殖し、割れた瓦の写真を見るとどうみても雨漏りしていないはずがない、という様子です。

宮内庁が整備工事現場を公開するのは今回2回目で、屋根瓦や金物が全て撤去され、下葺の土居葺きや下地の状態が露わになっています。屋根瓦をおろした工事途中の正倉の様子を間近で見ることができる又とない機会でした。宮内庁では、文化財建造物の保存修理についての理解を得る機会として現場を公開しており、公開時には数名の説明担当官が常駐しています。

厳しいチェックのあと正倉院現場入口へ。

正倉を覆う素屋根の様子と見学コース。(見学パンフレットより)

正倉院を工事中の雨風から守り、同時に作業足場とするため、まず「素屋根(すやね)」の建設作業が平成23年10月から始まり、翌24年2月末に完成、瓦が下されたのは6月でした。そして屋根の一部を開口し、小屋組みの状態を確認しました。そして見学当時は、下した瓦や建物の調査や行い、本格的な工事が始まる直前、という時期でした。
それが上の写真です。

改修の工程表
平成23年10月 素屋根建設
24年3月 第1回現場公開
同4月 正倉本体工事開始
屋根工事:瓦撤去、選別、清掃、土居葺き一部撤去、補足瓦制作開始
同9月 第2回現場公開
小屋組み構造補強工事
平成25年3月 第3回現場公開
同6月 屋根工事:土居葺復旧、瓦葺
平成26年1月 内部復旧
正倉の工事終了
同4月 素屋根解体、周辺復旧
同11月 正倉外構公開再開予定

今回の公開は平成24年9月21日(金)、22日(土)、23日(日)の計3日。公開部分は、素屋根内1階:正倉床下の様子、素屋根内2階:正倉東面の様子、素屋根内3階:正倉屋根(東西南北)の様子でした。

束柱と礎石間には鉛板が敷かれている

束柱と礎石間には鉛板が敷かれている

土間コンクリートは大正改修の際に施工され、ひび割れもなく状態は極めてよい

土間コンクリートは大正改修の際に施工され、ひび割れもなく状態は極めてよい

床下には10列×4列の柱を建て、その上に台輪(だいわ)と呼ぶ水平材を置く。この上に北倉と南倉は校木(あぜぎ)という断面三角形の材を20段重ねて壁体をつくり、校倉造としています。ただし、中倉のみは校倉造ではなく、柱と柱の間に厚板を落とし込んだ「板倉」で、構造が異なるため、創建当初から現在のような形であったのか,あるいは中倉は後に継ぎ足されたものではなかったかということが専門家のあいだで議論されてきましたが,近年では,使用されている建築材の科学的調査(年輪年代法)によって,宝物献納と同時期に,最初から現在の姿で建築されたようです。

下された屋根瓦はすべて、目視と打音で検査し、再使用か不採用を選別し、再使用できない分は、天平時代と同様の方法で制作されます。葺き替えられる瓦の数は36,000枚。もともとすべての瓦は土を敷く土葺きといわれる湿式工法で施工されていましたが、今回は、再使用する瓦は湿式工法で、新たに制作した瓦の部分は土を敷かない空葺きといわれる乾式工法で作業されます。

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